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サクはただ、じっと龍馬を見つめていた。
「何故名を教えなければならぬのか、じゃな?それは…」
龍馬はさも当然のように答えた。
「わしが知りたいからじゃ」
サクの目が僅かに見開かれた。
岡田は物珍しそうに龍馬を見ている。
そんな二人に構わず、龍馬は続ける。
「まァ無理強いはせん。いつか教えてくれたらそれでええ」
と、龍馬が白い歯を見せて笑った。
それに対しサクは目を細めた。
が、すぐに表情は無愛想に戻る。
「で?依頼は何?」
「用心棒?」
「あたしに聞かないで」
一蹴されてしまった。
そのとき襖が開き、
「御代わり持って来ましたよ。お、久し振りだな、サク」
「久し振り」
蓮が餡蜜と共に戻ってきた。
待ってました、とばかりに目を輝かせる龍馬。
餡蜜を受け取り、いざ口に運ばんとしたとき、龍馬はピタリと止まった。
「あ、忘れとった」
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