第一章 成立

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文久二年冬、京の都。 此処に、宿から見る京の景色に感嘆の声をあげる男が一人。 癖毛の黒髪を無造作に一つに結んだ、浅黒い肌のこの男。 「おおーっ!さすが京!まっこと華やかじゃ!」 土佐藩脱藩浪士、坂本龍馬である。 「やめんか、龍馬さん。田舎者みたいでみっともない」 書物を眺めながら龍馬を諫めたのは、土佐藩士の中岡慎太郎。 龍馬は、師である幕臣勝海舟(カツ カイシュウ)に頼まれ、京に来ているのだ。     ・・ 中岡とは偶然京で再会し、宿代を安く済ませる為に、同じ部屋に泊まっている。 「しかし、菓子を買う為に京に行けとは…。勝殿も人使いが荒いのう。龍馬さんも大変じゃな」 中岡のぼやきに、龍馬は楽しそうに答えた。 「いんや、せっかくじゃき京見物じゃ!…あ、店の名前なんじゃっけのう?」 中岡は懐から小さな紙(失くすから、と龍馬に預けられた)を取り出し、読み上げた。 「椿屋の…干菓子じゃて」
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