第一章 成立

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すると、龍馬は中岡の持っている紙をひったくるように奪った。 「龍馬さん?」 「下見じゃ、下見。椿屋がどんなもんか見とかねば」 「外を歩きたいだけじゃろ」 中岡の指摘に、龍馬は明るく笑った。 中岡は息を吐きながら、見ていた書物を閉じた。 「近頃の京は物騒じゃと聞いちょる。わしもついて行って…」 と、顔を上げたときに気付いた。 部屋には自分一人しか居ない。 中岡は書物を畳に置き、低く呟いた。 「全くあの人は…」 「ふう…。やっと出られたわ。中岡は細かくて敵わん」 一人ごちながら、龍馬は京をのんびりと歩く。 流石、京である。 町は活気付いているのだが、江戸のそれとはまた違う。 華やかで雅で、京ならではの趣を感じる。 だが、中岡の言う通り近頃の京は物騒である。 辻斬りが横行しているのだ。 怖くておちおち夜は出歩けぬと言う者も居る。 しかし、龍馬は思う。 【こう見えても、わしは北辰一刀流免許皆伝じゃ。そんじょそこらの侍には負けん】 そう思って、ふと気付いた。
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