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「此処…何処じゃ?」
どうやら、考え事をしながら歩いていた為、人通りの少ない路地に入ってしまったらしい。
草木が無造作に生えており、整備されていないようだ。
夜でもないのに烏の鳴き声が響き、それに対し草木がざわつく。
つまり、不気味である。
「余所見はいかんいかん」
龍馬は呑気な調子で呟くと、勝から渡された菓子代と自分の金が、懐にきちんとあるか確認した。
盗られたら何を言われるか分からない(特に中岡に)。
チラリと、龍馬は横目で背後を見た。
【二人…いや、三人か。まだお天道さんは落ちとらんちゅうのに。ほんに京は物騒じゃのう】
この程度の相手ならば。
後ろへ意識を向けたまま、龍馬は刀に手をかけた。
そのとき、瞬時に悟った。
【いや、違う!後ろじゃのうて…】
前だ!!
龍馬は前を見据えた。
其処には、笠を深々と被った侍が居た。
笠を深々と被っていても、左頬の刀傷ははっきりと分かる。
強い、隙がない、殺られるかもしれない。
龍馬が、侍を見て思ったことだった。
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