1章 蹂躙

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畑から奴隷小屋までの道を歩いていると、白い大理石の廊下の側で、不意にセイは誰かに呼び止められた。 「こんばんは、セイ」 鼻にかかったような声に、肩が反射的に揺れる。 「旦、那様…」 「どうしたんだい?恐い顔をして」 「い、いえ…なんでも、ありません…」 そう言いながらも、セイは自分の顔が強張っていくのを感じた。 「今夜は月が綺麗だ。まるで、狼の遠吠えを誘っているかのようだね。そうは思わないかい?」 「そ、そうですね。本当に狼の声が聞こえそうなくらい…で、では、私は宿舎に戻りますので。おやすみなさいませ、旦那さ…」  視線を避けるように、早々と立ち去ろうとしたセイの肩を、男が掴んだのはその時だった。   
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