第一話

2/8
前へ
/47ページ
次へ
 それはとある昼休みの出来事だった。  iポッドから流れる音楽を聴きながら弁当をつついていると、 「ちょっと寺田くん。なに、それ」  イヤホンをつけているにも拘わらず、その声ははっきりと聞こえた。 「弁当だけど」  俺は声の方を見向きせずそれだけを言う。 「そうじゃなくて。その耳から出てるものよ」 「ああ、それはただの耳毛だから気にしないでくれ」  俺の昼飯時を邪魔するな。腹が減っているんだ。  半ば無視するようなかたちで弁当を食い続けていると、隣から異様な雰囲気を感じた。  怒ってますね、すごく。すごく怒ってます。  オーラが半端じゃない。  これは、殺られる! 「天上の光よ――闇より降り注ぐ神秘の輝きよ――」  なんか詠唱始めやがった! まじやばいマジヤバイって! 「我が力の一部となりて――破滅と創造の宴を奏でたまえ!」 「ま、待て! それだけは勘弁して――」 「もう遅い!」  その少女は、アニメ雑誌を片手に、天高く腕を掲げた。  あ、これ、死んだな。 「デーモンヘヴンズレイ!」  光が、降り注ぐ……。  ぐわああああああああああああああ!
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加