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「ちょっと可哀想だったかもな」
下校中の電車の中、雄也がぽつりと呟いた。
「山音のことか?」
「ああ」
「かまわんだろ。奴のわがままぶりは目に余る。いい薬になっただろうよ」
「それはそうかもしれないけどな……」
「山音アツから確実に一本取れる奴なんかうちの学校にはいない。それを考えれば、ちょうどいいくらいさ。そうだろ雄也」
「ううむ……」
ふむ? 納得できないようだな。
「おいおい勘弁してくれよ雄也。まさか、山音に惚れたとか言うんじゃないんだろうな」
「いや、俺もそこまでバカではないよ。ただな……」
「ただ、なんだ?」
俺の問いに、雄也はアゴに手を当てて思案する素振りを見せた。
「これは多分だけど、山音アツは彼氏を欲しがっている」
お前はいきなり何を言い出すんだ。
俺のあきれた視線に気づいたか、雄也は慌てて弁明を始める。
「違うって。多分だよ、多分」
「多分って言ってもな。若い女のほとんどは彼氏を欲しがっていると思うが」
「……確かにその通りだな」
なんだかなぁ。
雄也が何が言いたいのかさっぱり解らん。
唯一解ることは、山音アツに彼氏ができることはないだろうということだ。あの性格じゃあな。
合掌。
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