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「困ったわねぇ……」
ため息をつくおじさんの前で、
真琴はうなだれている。結局、お客は怒って帰ってしまった。
半泣き状態の真琴に、おじさんは怒りはしなかったが、
さっきからこの事務所で向き合ったまま困り果てている。
真琴はおじさんに申し訳なくて何も言えない。
「やっぱりマコちゃんには無理だったかしらねえ」
その時、事務所のドアが開いた。
「客を怒らせたって?」
「圭司。珍しわね、アンタが店に来るなんて」
空いていた椅子にドカッと腰を下ろすと、
圭司は投げやりな口調で言った。
「そんなことだろうと思ったぜ。真琴みたいなガキんちょにフーゾクの仕事が出来る訳無いだろ。恩返しなんて10年早いんだよ」
ひどくバカにされたような気がした。
慣れた圭司の声が、さっきの恐怖を薄れさせたのかもしれない。
真琴は思わずムキになって言い返していた。
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