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真琴がこの家に出入りするようになったのは、
小学3年生の頃だ。急な病気で母親が亡くなり、
真琴は父親と二人になってしまったのだが、
忙しい商社の父親は仕事以外に気が回らない人で、
真琴はいつも遅くまで家に一人で放っておかれていた。
それを見かねた隣家のおじさんが自分の家に招き入れ、
食事の世話などを焼いてくれるようになったのだった。
真琴の父と違っておじさんは夕方が早い時間から家にいて、
凝った料理を作ってくれたり、
繕い物をしてくれたり、まるで母親のようにしてくれた。
朝も遅くまで家にいるようだし、
いったいおじさんはいつ仕事をしているのだろうと不思議に思った真琴は、
一度聞いてみたことがある。おじさんはちょっと困っていたようだが、
『お風呂屋さん』
を経営していると答えてくれた。
「じゃぁ、夜は番台に座っていなきゃいけないんじゃないの?」
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