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嘆きの湖畔
持っていたバックを、下に落としてしまった。
何が起きたか、理解ができない。
できる人なんていないだろう。
ドアを開ければ、隣のアパートと隔てている、コンクリートの壁が見えるはずだった。そして左に曲がると、道路に出て少し歩くと大通り、そして右に曲がると駅に向かう道路、靴を買うはずだった商店街があるはず。
しばらく立ち尽くした。
目の前に広がるのは、森。
大きな木が並んでいる。
地面は芝生のような、黄緑色の草、少し湿った土でできた小道。
まるで、童話の赤ずきんちゃんの絵本に出てくる様な……。
いや、赤ずきんちゃんの絵はもっと華やかだ。花も咲いている。
ここは色合いが、薄い。花も咲いてない。
木も大きいが、なんとなく元気が無いというか……。枯れかけている? でもないのだろうか、活気がない。
自然が放している、パワーというのだろうか。そういう物が感じられない。
空を見てみた。曇っている。雨は降りそうでもないが、太陽の光が薄い。
そう、全体的に、何もかもが薄いのだ。
赤とか黄色の、華やかな色がない。
テレビや映画で見る、イギリスの田舎の風景に似ている気がした。でも何かが微妙に違う。
何が違うのだろう? やっぱり木かな?
そして私は、なぜこんなに落ち着いて状況分析してるんだろう。
私、夢見てる訳ではないよね?
夢の中にいる様に、恐怖感というのだろうか、違和感がない。何故だろう?
風が吹いた。私の頬を撫でた。
ここにいても何も状況が変わらない気がしたので、バックを持って歩き出した。
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