嘆きの湖畔

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 窓を見てみた。  本当だ、暗くなってる。  いつの間に? そんなに時間経った? 「よかったら、泊まっていかない? 明日ドルクに行くから、その時にでも一緒に行きましょう」    寝室には大きめのベットとチェスト、コート掛け。シルバーでピカピカした、小さい掛け時計。  窓にカーテン。青い色に青い線、まるで海の中にいるみたいだ。  ベットカバーは薄い水色の花柄。とても綺麗にベットメイクしてある。  そしてアリスさんの歌手時代の写真が、あちこちに貼ってあった。  歌っている写真や、着飾っている写真。  マイクを持ち、髪を上げて髪飾りを付けて、綺麗な衣装を着ている。  綺麗なのだが、どこかドリーミーな感じだ。ふわふわのフリルが付いた、クラシックやオペラのコンサートで着る様な、どことなく昔のアイドル歌手の様な雰囲気が伺える。  アイドルだったのだろうか? ピンクでふわふわのドレス。  お姫様みたいだ。  アリスさんに借りたパジャマ、というよりネグリジェに着替えた。白いレースが付いたスカート。自分の服を畳んでベットに置いて、私は気が付いた。  写真、カラーじゃない。セピア色だ。  なぜピンクだと思ったんだろう? それに、何となく見覚えがある。  昔、似た様な歌手を見た事があるのだろうか?  するとアリスさんは部屋に入ってきた。 「パジャマ、着心地いい?」 「えぇ、とっても。写真、綺麗ですね。お姫様みたい」 「ありがとう。昔はスポットライト浴びて、歌ってたわ。拍手されて……。昔の話ね」  そして少し寂しそうに笑った。 「ベット大きいから、二人で寝ましょ。こんな風に誰かと寝るの、久々だわ」  そうしてランプの明かりを消して、二人で寝た。  そう言えば、私もこんな風に誰かと寝るの、久しぶりだ。何年ぶりだろう……。  目を閉じているアリスさんを見た。  久々のお客様だって言ってた。  鳥も動物も来ない。  こんな所で、どうして一人で暮らしてるんだろう? 毎日、どんな事をして過ごしてるんだろうか。  壁に掛かっている写真を見てみた。  なぜ歌うのをやめたんだろう? まだ充分若いのに。  そして、なぜ私はこの人に見覚えがあるのだろう。  色んな事を考えながら、眠りについた。        
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