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子供の頃、空想遊びが大好きだった。
ベットに入り、天井を見上げ、目を閉じる。
そうして、空想に浸った。
大好きな、エイジ。
エイジに、会いたい。
どうしたら、会えるかな。
壁に貼ったポスターを見て、思った。彼の歌うバラードを聞いて涙を流した。
今から思うと、かなりのバカだ。
──追っかけとかしないと、無理なんじゃない?
誰かが言った。あれは……友達のミキちゃん。
──追っかけ、て何?
──芸能人を追いかけるんだって。私もよくわかんない。
そんなので、エイジに会えるのかな。かなり疑問に思った。
エイジに会いたかったら、やっぱ自分も歌手にならないと駄目かな。
子供の頃の知恵なんて、そんなもんだな。
私は考えた。
私は歌手。ステージで歌っている。
ピンクの衣装を着て、スポットライトと歓声。
そしてステージの袖に、エイジが待っている。
それから、夜の街へ二人で出掛けて行った。
そして、その歌手の名前は……。
薗崎まりな。
私が付けた名前。
アリスさんは、窓の外を見ていた。
「……いつから、ここに住んでるんですか?」
「分からない。気が付いたらここにいた」
窓から見える、木と湖。曇った空、厚い雲。
「気が付いたらここにいて、もうどれくらいになるのかな。始めは鳥もいたけど、いつの間にかいなくなった。太陽も何年も見てない」
て事は、何年も曇ったまま?
「ここは季節が変わらないの。いつも肌寒くて、暖炉の火を消した事は数回しかないわ」
変わらない季節、変わらない景色。
毎日、なにもかもが薄い、こんな所にいる。
なぜ?
「毎日寒いし、村は遠いし。ここから出るのが嫌だった。たまにエナに行くけど、そこにいると違和感を感じた」
アリスさんは窓まで歩いて行って、空を見上げた。
「ドルク村に行ってもそれは同じだった。周りも、挨拶もろくにしなくなった。でもそこに行かないと生活は出来ない。でもそんな事どうでもよくなった」
なんか、この感じ、どこかで……。
そうだ、今の私だ。
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