リカー・コレクション

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 ネクタイを緩めた。5月だというのにかなり暑い。今日は夏日だ。  こんな日に外回りとは、ついてない。  今日行ったホテルは、客層が若そうな感じだった。ビールよりカクテルとかの方が受けそうだ。  受付にいた女の子、右の子の方が可愛かったな、今度誘ってみようか。  左の子はブスの上に無愛想だった。よく受付に置いておくな。受付は会社の顔だ、仕事の出来より愛想と外見だろうが。  これから会社に戻って書類作成だ。  明日の会議の準備もあるんだ。俺より早く入った奴らが無能なせいで、仕事がみんな俺に回ってくる。恥を知れ。  しかし暑い。ハンカチで汗を拭いた。  時計を見ると三時半。  それと同時に携帯が鳴った。沙織? 由香だろうか。 『大野みどり』  ……またこいつか。  舌打ちして、ポケットに携帯を押し込んだ。気分が悪い。  休憩を取る時間はあるな。それからでも間に合うだろう。とにかく冷たいものが飲みたい。  駅まで行って、自販機で何か買うか。その辺に喫茶店か何か……。  急に静かになった気がして、周りを見渡した。 ビルの壁に面した所に、店が見える。  『バニラミルク』  雑貨屋? 違うな、カウンターが見える。喫茶店だな。  なんか嫌にヒカヒカした店だな。女臭いというか、なんというか……。  でもここ意外に喫茶店は見当たらない。  暑いし、とにかく早く喉を潤したい。  店のドアを開けた。
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