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店
チャリン、と音が鳴った。
……やっぱり、女の子ご用達の店みたいだな。コーヒーカップに鏡、アクセサリー……。
まあ雑貨屋なんて、こんなもんだろうけど。
「いらっしゃいませ」
カウンターから声がした。
女が立っている。
結構な美人だ、いい女だ。
「何か飲みます?」
「はい、ではアイスコーヒーを」
カウンターに向かい、豆を取り出す女を眺めていた。
歳は、俺よりは上だな。でも何歳なのだろう。
近くで見ても、いい女だ。しかし隙がない感じだ。雰囲気といい、顔の造りといい、欠点がないというか……。CGで作ったような顔だ。垢抜けていて、作り物に近いものがある。
落ち着いた感じの人だ、やはり若くはないのだろう。
……男と安易に寝るタイプではないな。
「しかし暑いわね。夏が来たみたい」
「えぇ、本当に。こんな時に外回りなんて、ついてないです」
「まぁ、それは運が悪いわね。はいどうぞ」
そうして、グラスに入ったアイスコーヒーを出した。
「お仕事は何?」
「飲料メーカーで営業しています。今日はあるホテルに顔出しで」
また携帯が鳴った。
『大野みどり』
電源を切った。どうせもう少しで会社に帰るんだ、さして支障ないだろう。
「あら、出ないの?」
「えぇ、イタ電です。最近よく来るんで」
本当に、最近よく来る。
「何か、恨み買われる事でも?」
すると女は、真正面で値踏みするように俺を見ながら言う。
何だ?
「いや、そんな事はないですよ」
ははは、と笑った。女も笑った。
「この店、夜もしていますか?」
「ええ、しているわよ。お酒も出してるから」
「へぇ。じゃあ、俺の会社の商品、置いてもらおうかな」
「カクテルとかある?」
「えぇ、もちろん」
「そうね、ではお願いしようかしら」
するとまた女は俺を覗き込んだ。
「……あなたは、またここに来られそうな感じだし」
なにか、含みのある言い方をする。
どういう事だ?
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