頓服

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頓服

 家に着いて、電気を点けた。  六畳一間のアパート。床は畳。入居してから一度も替えていないカーテン。  朝干した洗濯物の、乾かない臭いがした。寒いから無理もない。  さっきまでいた店を思い出すと、さらに地味な感じがした。生活してるから仕方ないけど。みんなこんなもんだよね。  しかし寒いな、エアコン点けよう。これで朝までは渇くかもしれない。  留守電のチェック。今日も何も入ってない。  シャワー浴びよう、とにかく温まりたい。浴槽が欲しい、銭湯に行くの面倒臭いし。  貯金は大分貯まったけど、給料は上がらないから引越しは厳しいな。まぁ寒いの我慢すればいいか。  シャワーから出て、ガーガーとドライヤーをかけた。毛先が肩にかけたバスタオルに当たる。なかなか乾かない、ヒーターが欲しいな。  髪切ろうかなぁ……でもこれ以上切ると跳ねてみっともないな、結んでごまかせるこの長さがちょうどいいかも。  半渇きだけど腕も怠いしもういいや。  溜息をついて、ドライヤーのコードを抜いた。  お茶でも飲もう、会社からこっそり持ってきた緑茶。  急須が壊れている。いつ壊れたんだっけ。  テレビを点けた。天気予報をしている、明日は今日よりは暖かいみたいだ。東北では雪が降ったらしい。  買ってきたサプリを見てみた。  ──これは昔の自分を思い出し、今の自分に活力を付ける薬です。  普通のビタミン剤だって言ってたな。この類いには全く興味がないけど、せっかく買ってきたんだ、飲むか。  サプリを飲んで、洗濯物の乾かない臭いの中、眠りについた。        
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