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その日もいつもと同じような一日を過ごして、私は最寄りの駅に降りた。
別に刺激に飢えているわけじゃない。
どっちかと言えば、余計な刺激なんていらない。
でも…つまんない。
薄暗い空。
家に帰ったら帰ったで、それもまたいつものパターンよね…。
見上げる空は曇ってて、まるで私の気持ちみたい。
溜め息をついてバスを待つ。
ちょっとだけ…いつもと違う事がしたいなぁ。
そんな、ぼんやりとした気持ちで見渡すと、ふと路地裏への道をみつけた。
「(そういえば…あの道って使わないわね)」
薄暗い空より薄暗い道。危険な香り…って言ったらちょっとオーバーだけど、きっとそれに違いものを感じる。
バスが来るまで五分…。
ちょっとだけ…ちょっとだけなら…間に合うわね?
私はムクムクと沸き上がる好奇心を煽るように自分を納得させた。
ちょっとだけ危険な香りする路地裏…どんなお店があったり、どこに繋がってるんだろ?
まさか異次元への入り口とか?!…なんちゃって♪
ムクムク沸き上がる好奇心にドキドキする胸。
薄暗い道…。
まさか本当に…異次元に?そう思えるくらい不気味。
だって、これだけ人がいるのに誰も使わないって変じゃない?
変よ…絶対、変!
もしかして、不良とか極道とか…そっち方面の人がわんさかいたりはしないわよ…ね?
おっかなビックリ路地裏に足を踏み出す。
両側をビルに挟まれ、どことなく湿っぽい…。
よく漫画や映画で出てくるような…怪しい店とか、秘密組織とかのアジトがありそうな…そんな道。
くだらない…とは思うけど、つまんないよりマシ。
奥には…奥には何があるの?
どこかに繋がってるの?
それとも行き止まり?
私はワクワクしながら道を歩く。
すると、かすかに風に乗って何かが聞こえてきた。
どこからのお店から漏れる有線放送?
…ううん。違う。
歩くにつれて大きくハッキリしてくる音。
これは…ギター?
誰かがギターを弾いてるのかしら?
音に誘われるまま奥へ行くと、そこはまた人の気配のない道だった。
ビルとビルに挟まれた道を行く先は、ビルとフェンスに挟まれた道だった。
フェンスの向こう…下に高速道路が見える。
「こんな所に出るのね…」
意味なんてないけど、変に関心。
そんな私の耳に、ギターの音が届く。
それに従い顔を向けると、一人の男の人が立っていた。
もちろん、ギターを抱えてる。
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