おっちゃんの唄

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 ピンポーン。 明くる朝。のんびり朝飯食って、また高校野球見ながらゴロゴロしとったら玄関のチャイムが鳴った。 「はいはいはい」 台所で洗いモンしとった母ちゃんが手を拭きながら出てくる。 「あ!わ、わしが出るさかい!」 慌ててわしは立ち上がり、驚く母ちゃんより早く駆け出す。 「な、なんですの?!珍しい」 「ええからええから!」 バタバタと玄関に行き開けると、案の定、そこには宅配便の兄ちゃんがおった。 もちろん、届いたんはわしのギターとアンプや。  それを受け取りリビングに戻ると、丁度アイが二階から降りて来よった。 「オトン…何やそれ?ギターちゃうん?」 なんや、もう見つかってもうたんかいな…。 ホンマやったら夜まで隠しとくつもりやったのにな。 「…そや」 ちょっと照れ臭いわ。 リビングに持って行くと、母ちゃんが首を傾げとる。 「なんで、そないなモン…」 「まさか、オトン弾くん?」 「……」 頷くと母ちゃんとアイは顔を見合わせよる。 「…オカン、知っとった?オトン、ギター弾けるん」 「そないな話、聞いたことあらへんよ」 そりゃそうや。 母ちゃんにも今まで高校時代の話なんぞロクにしたことあらへん。せやからアイが知っとるわけあらへん。 「…ホンマに弾けるん?」 「当たり前や。わし、高校の時はバンドでギターやっとったんやで?」 「嘘や~!似合わんって~!」 「あんなぁ…」 わしかて生まれた時からオッサンやったわけやあらへんがな…。若い頃あって当たり前やん。 「嘘ちゃうわ。わしかて昔は若かったんや」 「当たり前やん。生まれた時からオッサンやったらキモイわ」 …なんや、分かっとるやん。 「で、どんな曲できるん?」 「メタルやったら弾けるんやけど…今は…」 そう言えば、家族でカラオケ行った事あらへんなぁ。わしが歌うっちゅうたら…また笑いよるやろか? 「今はスタンド・バイ・ミー練習しとんねん」 「オトン、歌うん?!」 「…歌うん苦手やけどな」 「スタンド・バイ・ミーって英語の歌やん!オトン、英語いけるん?」 「せやから昔は洋楽のメタルやってたっちゅうねん。多分、標準語より分かっとるわ」 「へえ~!」 意外にもアイは笑わんと驚いてばっかやった。 そないに、わしが英語の歌、歌うん意外…やろな。ギター弾けるんも、意外すぎるんやろうなぁ。 「なぁ!弾いてえな!」 呆れると思うてたアイが、はしゃぐの見て思わずニヤけてまうわ。
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