闇の慟哭

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 かったりぃ…。 それが俺の口癖。どこにいても、誰といても。 「かったりぃなぁ…」 俺はスクーターでセンターラインをフルアクセルで走りながら、流れていく街並みを、邪魔そうにする車たちに唾を吐く。 イライラすんだよ。  駅前がアイツとの待ち合わせ場所だ。 「よぉ」 同じようなスクーターにノーヘルでアイツはくわえていたタバコを地面に捨てながら手を上げた。 腐れ縁。中学からの悪友。 共に一応は高校生なんだけど、学校なんて行ってない。理由は簡単だ。 かったりぃから。 それだけの理由だ。 「でよ?今日はどうする?」 俺がタバコをくわえると、アイツは不機嫌そうにバスを睨んだ。 「どうするってか?んなもん…別になんもないだろ」 「…だな」 こんな毎日を、ずっと二人で過ごしている。 「あーっ!どっかに女いねぇかなぁ!」 まだ昼間。普通の人間は学校や会社にいる時間。街をウロウロするのは俺たちと良く似た男ばかりだ。 「くそ…金もないしなぁ。カツアゲでもすっか?」 「カモがいねぇだろ…」 金…。それさえあれば、この街では楽しく生きていける。 それでも俺たちの財布は共に軽い。 「金がありゃ風俗にでも行くんだけどなぁ」 金髪をくしゃくしゃとしながらアイツは唾を吐く。 イライラする気持ちが空回りしていく。 俺たちは、そのイライラする理由も知らないまま、その捌け口を探している。  夕方になるまで適当に喋り、駅に中学生や高校生が見え始めたら俺たちは『イライラの捌け口』を求めて睨みをきかせる。 まるで狼のように。 そう自分たちを狼のように感じ、普通に生きてる奴らは飼い犬だと笑っていた。 「ゲーセン行くか?パチンコ屋にすっか?」 それは『どこで遊ぶか』という意味じゃない。どこでカモるか。どこでカツアゲするかということだ。 「どこだっていいよ」 金さえ手に入ればゲーセンだろうがパチンコ屋だろうが構わない。 「だよな…。とりあえずウロウロすっか?」 スクーターをコンビニに置いて、俺たちは獲物を探しに歩き出した。  無口に歩くサラリーマンたち。くだらない話でゲラゲラ笑う学生たち。 ムカつく…。 なんで、コイツらはヘラヘラ生きてやがるんだ? 幸せそうなツラが気に入らない。 かったるい。そしてイライラする。 誰でもいいさ。 さっさとカモ見つけて金取れば。 ドン! その時、俺たちに誰かがぶつかってきた。 見ると、それは一人の女子高生。
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