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「ご、ごめんなさい!」
その女子高生は俺たちにぶつかり軽く頭を下げる。
「あ~?痛ぇなぁオイ!」
「すみません」
睨みをきかせたつもりが、女子高生はまた軽く頭を下げて去って行ってしまう。
「…なぁ?オイ」
俺が舌打ちしてると、アイツはニヤリと笑って去って行く女子高生を指差した。
見てみると、その行く先は路地裏。
確か、あの路地裏は行き止まりで、何もなかったはず…。
「…行こうぜ」
アイツはそう言うとニヤニヤしながら歩き始める。
ビルの裏と裏に挟まれた路地裏。ひんやりとしていてジメジメしている。
「とにかく手分けして探そうぜ?みつけた方から先に…でよ」
ニヤニヤしたままアイツは迷路のような路地裏に消えてしまう。
一人取り残され、俺もまた先にみつけてやろうと、アイツとは違う道を歩く。
そう、俺たちは狼。
獲物を求める狼。
こんな楽しいこと、そう滅多にあるものじゃないよな。
人気のない場所に女子高生が一人。何をするつもりでか分からないけど、少なくとも他に誰かが来ることはないだろう。
右へ左へ。本当に迷路みたいな道を歩いていると、これが現実かどうかも分からなくなる。
ゲーム…。
そうだ。これはゲームなんだ。
迷路に迷いこんだ女子高生をみつけるゲームだ。
そして、見事みつけ出した後は…スペシャルな映像…。
そうだ。これはゲーム。アイツと対戦してるゲームだ。
早くみつけ出さなきゃ。
アイツより早く!
頭の中では、もうすでにアイツが女子高生をみつけてしまった後の映像がちらつく。
クソッ!
まだ、みつけてないよな?
焦っていると知らず知らずのうちに歩みが速まる。
とにかくアイツより先にみつけて、アイツが悔しがるのを見てみたい。
もうその時には、あの女子高生は俺の…。
ニヤリ。
いつの間にか笑いながら俺は路地裏を走っていた。
その時、チラッと角を曲がる人影が見えた。
「(いたっ!)」
心の中で勝利を確信して俺は女子高生が曲がった角を目指す。
もし、これで角を曲がったところにアイツがいたら…。
まぁ、いいや。
それならそれで、二人で仲良く獲物をいただけばいいだけのこと。
心臓がバクバクと打つ。
それは走っていたせいか、それとも胸の奥から湧き出る黒い衝動のすいか、俺には分からない。
どうでもいい。
俺は角を曲がった先にいる獲物を襲う狼。
今は、それが楽しいだけでいい。
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