49人が本棚に入れています
本棚に追加
それから義高と彼女の昼休みのイメチェン計画は始まった。
お互い雑誌をチェックし合って服のセンスなどを磨き、義高がバイト先で借りたメイクボックスを使ってメイクの練習をする。そして彼女は家に帰ってから雑誌に載っていた肌の手入れなどを行って徹底したイメチェンが行われた。
───そしてようやく1週間が過ぎた。
「この髪型…どうですか‥?」
「お、可愛いじゃん?自分で巻いたのか?」
「いいえ…寝る前に編み込みして寝たらふわぁ、ってなりました‥」
「いいじゃん?紅玉の髪ってクセがないからそういうのやりやすいんだろうし…バレンタインの日もこの髪型にしろよ?」
「わかりました♪‥あ、あと…」
彼女は嬉しそうに笑って可愛らしい包みの袋を義高に手渡した。
「何?」
「バレンタインのチョコを‥作ってみたんですけど…味見をお願いしてもいいですか‥?」
(―――う…)
彼女は最初に会った時よりも義高にだいぶなついていて、あまりおどおどしなくなっていた。
それでも他人行儀な丁寧語で話すクセは治らないようでそれも彼女の個性だろうからまぁいいかと義高は考えていたのだが…
最近彼女にまっすぐに見つめられると自分がおかしくなる。
───彼女は本来、人の目を見て話すようだったらしく義高に慣れてきたのか最近よく目を義高と目を合わせて話す。
しかし義高はそんな状況に慣れておらず、まっすぐに見つめられてしまうと何も言えなくなって結局彼女のお願いを聞いてしまうのだ。
「あまり‥甘い物は好きじゃないとお聞きしていたので…ビターチョコで作ってみたんですけど‥」
現に今こうして彼女がくれた包みを開けてチョコを食そうとしている所だった。
「俺も甘いの苦手だからありがたいな…でも俺なんかが味見係でいいのか?」
「辻くんがいいんです…私の事‥こんなに励ましてくれて…協力してくれて───だから最後までお願いしたいんです‥」
「そーか?…じゃあ、いただきます」
そう言って一口そのチョコを食べてみた。
「ど、どうですか‥?」
「ん、甘すぎなくて美味いよ?」
「良かったぁ…」
彼女は本当に嬉しそうに笑った。―――やはり自分はおかしい。
彼女の笑顔を“可愛い”だなんて思ってしまったのだから。
最初のコメントを投稿しよう!