図書館のいばら姫

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飛鷹と登校する時間をずらした為か、校庭に人はそんなにおらず義高は欠伸をしながら歩いていた。 (あれからもう2ヶ月…か。あいつら仲良くやってんだよなぁ───) 「あははははっ、なにそれぇ?ウケるー」 (―――うるせぇな…何だ?) 昇降口を抜けて下駄箱からひょこりと覗くと、階段の所で女子が数人座って喋り込んでいた。 ───と、同時に見えたのは黒髪の緩いみつ編みをしてうつ向いたままの少女、“いばら姫”がいた。 昨日の今日で何だか気まずい。それはもちろん義高だけなのだが、変な態度をとって彼女に昨日の事がバレるのもそれはそれで恥ずかしい。反対側の階段を使うか、と考えてふと気付いた。 (何であんなトコで立ち止まってんだ…?) 階段の女子達は彼女に気付いていないのかずっと話を続けていて、階段を座って封鎖しているようだ。 「ぁの‥」 「やっだぁ、それは有り得ないって!この前のあの話のが絶対面白いし!」 (あ…そっか───) 彼女は彼女なりに勇気を出している。でもその小さな勇気は女子達に届いてないのか、彼女をまるでそこにはいないという“空気”のような扱いを無意識にしている。 ―――何だか自分と飛鷹達を見ているようで虚しくなってしまった。 「───オイ」 気が付いたら義高は女子達の前まで来て声を掛けていた。 「はぁ?…って辻君?!」 「やーん、ラッキー♪何でうちらに話しかけてくれたの?」 「あたし辻君のファンなんだぁ♪昨日のサッカー見てたよ?すっごいカッコよかったぁ」 「そりゃどーも‥で、いつになったらそこから退くわけ?」 「え…?」 「階段、上らないと教室に行けねぇだろ?退いてくんない?」 「あ…ごめん」 義高の言葉が予想外だったのか女子達はおずおずと立ち上がってその場から退いた。 「行けよ、通りたかったんだろ?」 そう言って彼女を振り返ると彼女はやはりうつ向いたままで小さくこくりと頷き、ぺこんっと頭を下げるとそのまま階段を駆け足で上っていった。 (声、聞けるかと思ったんだけどな…って何考えてんだよ、俺は) それを少し残念に思っている自分に首を傾げて義高は自分も教室へと向かった。 階段の女子達が睨んでいた事にも気付かずに。
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