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昼休みがようやく訪れると生徒達は活気的な空気になる。
もちろん、義高もその内の1人のハズだったが今日はそんな気分になれなかった。
「義高、サッカーしようぜ?昨日の勝負の続き続き!」
「あー…そのうちな?」
「何だよ、付き合い悪いな‥何かあったか?」
気が付くと義高の席の周りにはいつも自分がつるんでいるクラスメート達が集まっていて、義高はぼーっとしたままに本音を漏らした。
「なぁ…紅玉って何で“いばら姫”って呼ばれてるんだ?」
義高の言葉が意外だったのか周りにいたクラスメート達は当たり前かのように口々に話だした。
「最初は白雪姫だったんだよ、名前がそうだろ?」
「でも童話の白雪姫みたいに可愛い訳じゃなくてずっと図書室に住み着いてるみたいなくら~い感じだったからそれもすぐに呼ばれなくなったよな?」
「ああ、それである時図書室に誰かが行ったらさ‥いばら姫の童話読んで泣いてたんだってさ。で、いばら姫に感動するなんて変なヤツって皮肉っぽい意味を込めていばら姫ってみんなからかって呼んでんだよ」
「つーかこの話学年中で有名だぞ?知らないお前にびっくりだよ」
「面白半分だったのがそのまま定着したのか‥ふーん…」
半分位話に納得して義高は立ち上がった。
「サッカーすんのか?」
「今日はパス…ちょっとヤボ用思い出した」
そう呟いて義高は教室を出た。
(何かほっとけないんだよな、紅玉の事が…)
そう思って彼女がいるであろう図書室へと足を運んだ。
**********
(ホントにいる‥)
図書室の入口から中を覗くと昨日と同じ席に彼女は座って本を読んでいた。
凛とした姿勢で微動だにせず、ただひたすら本に集中しているようで義高が目の前に座ってもまったく気付かなかないようだった。
やがて本を読み終えてふぅ…と一息吐くといつも掛けている黒縁のメガネを掛けて、ようやくこちらに気付いて彼女は恐る恐る義高を見上げた。
「邪魔…したか?」
何て声を掛けていいのか解らず、義高はとりあえず彼女の時間を邪魔したか尋ねた。
彼女は驚きながらふるふると思いきり首を横に振った。
「この時間なら図書室は紅玉しかいないんだな…」
その言葉に彼女こくりと頷いた。
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