声が迷走する

25/25
28人が本棚に入れています
本棚に追加
/99ページ
 それをわかっているから、緑祥は反論しなかった。  芙蓉が銃を構える。 「行くぞ」  緑祥は、仲間に向かって声をかけた。  今はとにかく、無駄な動きはしないほうがいい。  言われた通り、この場を去ることが今一番の優先事項だった。  去り際。  緑祥は振り返る。  芙蓉の表情は見えなかった。  言いたいことは沢山あった。聞きたいことも。  だが今は、何も言えない。 「お前なんてなぁ、片腕で捻り潰せるんだよ、常磐」  芙蓉が笑ったような気がした。 「私だって強くなったんです!蘇芳様にお仕え出来るくらい…一級戦闘員にまでなったんですから…!」  胸がざわつく。  何故こんなに不安なのだろう? 「全力であなたを倒します、芙蓉先輩!」  まだ、芙蓉には何か秘密がある。  疑惑は生まれ、 「死ぬのはてめーだろ」  声は、迷走する。
/99ページ

最初のコメントを投稿しよう!