力が暴走する

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 願うあまりに非力はもどかしく、望むほどに力は暴走する。  そしてその末路は。 「燐」  呼ばれて振り返ると、雅が新聞を持って立っていた。  この辺りでは、噂好きの出す新聞が情報源だ。  新聞と言ったってたいしたものではない。  唯一政府軍の巡回が無い時間に、印刷業を営む数人がごく僅かな部数だけ刷り出した、ぺらぺらの紙一枚。  手打ちで短時間で仕上げるために落丁や誤字、脱字も多いが、内容はなかなか、興味深いものばかりだ。  印刷物のデータは政府にチェックされてしまうために、これも早々に焼却処分する必要がある。  雅はそれを踏まえて、記事を早く見てくれと言わんばかりに新聞を差し出した。  余計な説明をするより、記事に目を通すほうが早いと読んだのだろう。  燐は何も聞かずにそれを受け取る。 「え…?これって…!」  レジスタンスの奇襲により、政府軍中将神凪が失踪した、と。  そういう内容の、記事だった。
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