叶わぬ恋だけれど

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 ここは大きな一軒家。そこで働く一人の従僕が大きな一軒家のお嬢様に恋をした。叶わぬ恋だと分かっているけど、それでもお嬢様が好きだった。 「おい! まだ部屋の掃除が終わっていないのか。このノロマめ!」  主人が、掃除を始めたばかりの従僕に理不尽にガミガミ怒る。 「申し訳ございません。すぐに終わらせますので」  主人にどれだけひどいことを言われても、お嬢様がいると思うだけで我慢できる。ここで怒ってしまっては、もうお嬢様に会えなくなるのだから。  そしてそのお嬢様はというと 「部屋の掃除が終わったら、すぐに晩御飯を作るのよ! 分かってるわね!?」  こんなことを平気で言うお嬢様だけど、彼は知っている。晩御飯の残りを主人に内緒で庭に住んでいる猫にあげていること。彼は、内面に優しさがあるお嬢様のことが大好きだ。  でも、そんな時間も長くは続かなかった……  主人が、使えない従僕に嫌気がさして解雇することに決めた。彼もいつかそんな日が来ると思って覚悟を決めてた。だけど、本当に言われるとなるとやっぱり悲しいし寂しい。何より、お嬢様にもう会えないんだと思うと胸が痛くなる。  でもここで主人に逆らってはそれこそ迷惑がかかると思い、彼は荷物をまとめ、泣きたい自分を抑え笑顔で去ることに決めた。  そして、いよいよここから去るときが来た。普通、別れと言えば感動があるはずなのに、そんなもんありゃしない。逆にやっと去ってもらえるといった表情をしている。  でも彼は、お嬢様に感謝の気持ちを込めて精一杯手を振った。お嬢様も小さくではあるが手を振り返してくれた。彼にとっては、それが何よりも嬉しい返事だった。  そして彼は去っていった……  従僕でありながらお嬢様に恋した彼。彼にとっては叶わぬ恋。主人に嫌がられ、理不尽な命令を受けながらもお嬢様のために頑張った彼。お嬢様と一緒にいた全ての時間が青春のページ。  恋をしてる人は輝いているというけれど、それは本当なのだと思う。だって、間違いなくお嬢様のために頑張っていた彼は輝いていたのだから……
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