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「桜沢……桜沢……ここか」
着いた先は古びたアパートの2階。階段を上がって最奥の部屋だ。
僕はコホンッと小さく咳払いをして、インターホンを押した。
―ピンポーン―
「どちら様ですかぁ?」
間延びした声が中から答えた。
「藤野です。息子さんの家庭教師の件で伺いました」
ガチャッと扉が開く。
「待ってたわ。さ、狭い所だけどどうぞ上がって」
促されるまま室内に入る。
「………」
玄関のすぐ横に台所がある家なんて初めて見た…。
「ごめんねぇ、春樹まだ学校から帰ってないのよ」
苦笑しながら謝るミス桜沢夫人は、年の割りには綺麗だった。
化粧のせいも多分にあるのだろうけど、これで30後半なのだから驚きだ。
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