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思わず駆け寄った。
お母さんは何も知らないので、笑顔で私に言う。
『咲ったら高校までは付き合う人の事私に逐一話ししてくれていたのに、卒業してからは何も言ってくれないんだから。こんな素敵な彼氏がいたのね。だから泊まりの数も多かったのね。』
と微笑ましそうに私達を見る。
『岸田くん、さあどうぞ。』
そう言ってリビングに通す。
今、私と愁はリビングでゆっくり話せるような状況じゃないんだけど…と内心思いながらも愁は靴を脱ぎ、私と共にリビングへ向かった。
お母さんに話せなかったのはもちろんあおいの存在が多くを占めていた。
いつかは言おうと思っていたが、こんな形で愁と引き合わせてしまうことになってしまったことに後悔をした。
『咲、ちゃんと話合いたいと思って…。待っても待っても返信も返って来ないし、家にも来ないからいきなり家まで来ちゃってごめんな。』
申し訳なさそうに愁が謝る。
「私の方こそ、昨日は逃げるように去って、連絡もしないでごめんなさい。」
私達はいつもよりも小声で話し始める。
お母さんは何も知らずに台所で愁へのおもてなしの用意をしていた。
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