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隣に一緒にいた愁はただ、手紙を見つめていた。
手紙はともかく、こんなに品物を頂いてしまって、お母さんに何も言わないわけにはいかない。
「お母さん、この紙袋には洋服から部屋着、トレーニングウエアーまで沢山入ってるんだけど、昨日牧野さんから合格祝いにって貰ったものなの。」
台所にいるお母さんに届くように大きな声で話す。
私は紙袋から全て出して、こんなにってアピールをした。
『咲、そういうことは昨日言いなさいよ。先方にお礼の挨拶をするのが礼儀というものなんだから。本当に咲は抜けてるんだから…。』
そう言ってお母さんは受話器を取って牧野さんに連絡しようとする。
心の中で、お母さんにまで昨日の出来事が知られてしまうんじゃないかとドギマギしている私の側で
愁も焦っているような様子だった。
『牧野さん。昨日はうちの咲がそちらに突然お邪魔してすみませんでした。それに何だか沢山の品物を咲に下さったようで…。』
『え?はい。どうしてそんな…。』
『岸田くんと咲ですか?今うちに来ていますけど…。』
『あ、待ってくださいっ!』
それだけで会話は終わってしまったようだった。
嫌な予感が私と愁に電流が流れるように走った。
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