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幕末時代―――――。
ある冬の夜。
空はどんよりとした厚い雲に覆われ、世界を深い闇の中へ飲み込んでいた。
家の所々に明かりは付いているものの、この寒さのせいか外に人気は全く無い。
賑やかな昼間とは打って変わり、不気味な程静まり返っている。
それはとても寂しく感じた。まあ、僕達にとっては効率が良かったけれども。
先程目的の場所に辿り着いた僕達五人は家の影に隠れ、息を潜めていた。
僕は口元に手を当てて「ハァ~。」と手に息を吹きかける。
一瞬だけ手に温もりが生じるが、すぐに冷えた。
-もしかして、今夜は雪が降るのかな・・・。
ふと、上空を見上げる。
今夜は三日月の筈だが・・・多分この雲行きじゃあ見れないだろうな~。と残念に思う。
「今夜は冷えるな。」
隣で僕の仲間、杉元達哉が同じように手に息を吹きかけながら、辺りの様子を伺っていた。
「こんな夜はあっつ~い!酒を飲みてーな~~。」
達哉の言葉に、僕達は笑う。
「達哉さんは本当に酒が好きなんですね~。」
仲間の一人が無邪気に語り掛ける。
「そりゃそうよ!俺の人生に酒は必需品だからな。死ぬ時も酒を飲んで死にたいね!!!」
握り拳を作り力説する達哉に、僕を含めて仲間全員はクツクツと小さく笑った。
「はいはい。その時は僕が上級の酒を飲ませてやるよ。」
「ほう、それは楽しみだ・・・って、おい。」
ふと、達哉が視線を外へ移した際、何かに気付いたのか笑顔が一瞬にして消える。
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