短編です

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―――――?   おそらく、彼には理解できなかっただろう。 何故、殺そうとしていた自分が逆に斬られているのか。 叫び声を挙げる事も許されず、彼は笑顔のまま上から下まで真っ二つにされ、辺りを真っ赤に染めながらグシャリと地面へ崩れ落ちた。 一瞬遅れて降ってくる血の雨を浴び、僕の衣は真っ赤に染まる。 「ひ・・・ひぃぃぃ!!」 明かりを持っていた中年の男が、驚きのあまり腰を抜かす。 それでも提灯は決して落とさない。それはある意味凄い事ではないか・・・と、僕は素直に思った。 「貴っ・・・様ぁぁぁ!!よくもぉぉぉ!!!!!」 仲間が斬られた怒りに我を忘れてしまったかのように、標的四人は物凄い形相で一斉に刀を抜く。  血を浴びた刀を一度払い、僕は剣先を標的に向けて静かに微笑んだ。 「このように一瞬で済みますから、痛みは感じません。・・・では、さようなら。」 それを合図に、今まで背後に待機していた達哉達が一斉に刀を抜き、駆け出した。 『くっそぉぉぉぉぉ!!』 彼等も一斉に僕達の方へ襲い掛かり、刀を振り上げた。
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