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「あなたは・・・」
落ち着いた私に、青年はゆっくり大人しい声で続けた。
「それでも、あなたはきちんと生きている。死んだ人ために生きてるなんてもう十分でしょ?あなたは・・・あなたは、まだまだ先が約束されているんですから前に進むしかないんですよ。それに、写真に写っているお姉さんの本当の笑顔めちゃくちゃ可愛いですもん。乗り越えて、もう一回その笑顔取り戻しましょうよ」
青年は、荷物のリュックを背負い玄関にたった。
「あ、なんか助けられたのにロクなお礼もできなくてすいません。おまけに生意気なことばっかり言っちゃって・・・ありがとうございました」
扉が閉まって、暫くしてからエンジン音が響き音が遠のいていった。
ふと、空を見上げると雨雲は消え去り太陽が顔を覗かせていた。
顔は涙でくしゃくしゃになってしまっているけど、今からでも愛車のホーネットに跨りアイツと行った場所に行ってみよう。
あの、生意気な青年が言ったように笑顔が取り戻せるかもしれない。
頑張って、本当に生きるって意味を探してみよう。
きっと、あの青年も意味を探すために旅をしてるのかも。
ふと、ソファーに目をやり笑顔がこぼれた。
そこには、青年の忘れ物であろうロケットには彼の恋人であろう可愛らしい女性の写真が入っていた。
・・・きみも、あんまり私のこと言えないんじゃないかな?
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