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黄昏時、人もまばらな路地を宛てもなく歩いていく青年。
何処に行こうと言う訳もなく、ただまっすぐ前だけを向いて歩いて行き、やがて不意に角を曲がり小さな路地裏へと入り込む。
そして直ぐ様壁際へ身を潜めて気配を消し、足早に近付いてくる足音に耳を澄ませ、足音が近くなった処で瞬時に刀を抜く。
「……何の用だ。」
「!?」
静かに問うと同時に刀の刃を男の喉元に押し付ける。
出迎えられると同時に刃を押し付けられるなどとは予想していなかった男は、あまりの事に目を見開き動揺を露にする。
徐々に青ざめていく男の顔を鋭い瞳が刺す。
「答えろ。何故オレを追って来た。」
視線を外さないまま問いかけながら微かに刃を強く押し当ててやれば、「ヒッ」と上ずった悲鳴が上がる。
「お、俺はただっ、あんたを殺せって言われただけだ……っ!!」
「へぇ…。誰に?」
「………」
男は答えない。
それを知ってか知らずか、彼がほくそ笑んだ事に男は気付かない。
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