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炊き立ての白いご飯、鯵の干物。豆腐とわかめのお味噌汁。食堂に並んだ食事はおいしくて、あっという間に完食。気づけば、隣に座った望海ちゃんがニコニコと見ていて、なんだかすごく恥ずかしい。がっついている、とか思われてないだろうか…夢中で食べてたし…。
俺の気持ちが表に出ていたのだろうか。
「うれしいです」
双海さんがおかわりの緑茶を注いでくれながら、言ってくれた。
「おいしく食べて頂けて、すごくうれしい」
「そんな大げさな」と笑って答えようとして、涙目の双海さんを見てしまった。
「よかったね、双海ちゃん」
望海ちゃんがハンカチで、双海さんの涙を拭ってあげている。
「普段、誰も誉めてくれないものね」
泣いているメイド服の美女、その涙を拭う小学生の美少女。
綺麗な絵になりそうなこの構図。
「双海を泣かせたのか」
こんなセリフを吐きながら入ってくるのは、ただ一人。
「俺のせいじゃねえ」
「うん、わかってる」天川はあっさり返して「もう一人の参加者が到着した」
彼女の後ろから食堂に入ってきたのは、三十代のスーツ姿の男性。
俺の方を見ても、にこりともせずに、睨みつけるような感じ。誰かに似ている…と思ったら、あの老人に雰囲気が似ているんだ。
陰気な感じといい、冷たい印象といい。
部屋の空気まで、10℃くらい下がった気がした。
とりあえず、挨拶を、と立ち上がったが、相手は無視して天川にごにょごにょ。
「じゃ、この元崎(もとざき)さんを部屋に案内してくる。平井も後でな」
二人退室。いっきに気温も元通り。
「…陰気なおじさん…」思わず呟いた。
「そうですね」と双海さんは同意し、
「あれは絶対独身だよ」と妙な確信を持って断言するは、望海ちゃん。
「平井さんは、あんなになっちゃダメだよ。なりそうになったら、私がお嫁さんになってあげるからね」
拳を握り締め、高らかに掲げて宣言。
「あはは」笑って誤魔化すしかない。
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