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「望海さん、初対面の方に不躾ですわよ」
やんわりと双海さんが注意してくれる。当の本人は、ぷっくりと頬を膨らませ。
「本気よ。ピンッって電波が来たのだもの」
「いつからお前は電波娘になった」
きつい口調と共に再び現れた天川は、望海ちゃんのおでこを人差し指で突付いた。
「舞い上がる気持ちもわからんではないが、事は公正に行われることが必要だ。余計なことは言うな」
「…はーい」
しょぼーんとうな垂れた望海ちゃんは、何だかうちの保育園児達が怒られた後のように見えて、フォローせずにはいられない。
「そう言わなくてもさ、な」
「ううん。いいの」
望海ちゃんが、痛々しげな笑みを浮かべて、俺を見上げた。
「海晴ちゃんの言う通りだもの。…私、部屋に戻ります」
椅子から降りて、もう一度俺を見上げ。
「ゲーム、頑張ってください。私は、貴方に勝って欲しいです」
そのまま食堂を出て行った。
「天川」
つい語気が荒くなってしまう。
「もう少し言い方を考えてやれよ」
一向に悪びれた様子もなく「次は気をつけることにする。じゃ、部屋に移動するか」
そのままスタスタと歩き出し、俺は慌てて荷物を手に、後を追った。
連れて行かれたのは、いつかのサンルーム。
先に来ていた元崎氏は、ソファに背中を丸めてコーヒーをすすっている。相変わらず、俺と目を合わせることもしない。
「平井さんは、紅茶でよろしいのですか?」
後ろから声をかけてきたのは双海さんだ。
って、あれ?
「…俺が食堂を出た時、まだいましたよね」
「はい。それがどうかしまして?」
さらっと笑顔で答えられてしまったけれど、俺達より後に食堂を出て、元崎氏にコーヒーを出すって…あれ?
でも、まあ、ここは彼女が住んでいる屋敷なんだから、俺の知らない通路とかあるんだろう。うん。きっとそうだな。
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