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「変わってもらえ。『ゲーム』の方がお前には必要だろう」
相変わらず淡々と話す天川。そりゃ、まとまった金が入るのなら、そっちが最優先だが…と考えて、今更ながら疑問がわいた。
「『ゲーム』って、何の『ゲーム』をするんだ?」
大金が入るかも、って一点だけに目が行っていたため、内容なんて聞いてなかったや。
「一種のクイズゲーム。資格も知識も必要ない」
「さっきの爺さんの話しだと、俺の他にも候補者がいるんだろ?」
「まあね」と答えながら、何故かフッと馬鹿にしたように笑った。
会うまでは、父親にでも会わされるんじゃないか、と思っていたのだけれど、あの寒々とした雰囲気じゃ、そんな関係ということではなさそうだ。
「平井」
俺の名を呼んだ天川は、また淡々とした表情に戻っていた。
「今日は帰って、泊まりの準備でも始めておけ。施設の方に届けを出したりしなきゃいけないのだろう」
「ああ、そうだ。バイトの交代も頼めるやつを探さなきゃならないし」
『ゲーム』で勝つ気ではいる。でも、勝てなかったら、バイト代が何かの足しになるかも知れないのだから。
「天川」
改めて彼女の名を呼ぶと、ちょっと眉根を寄せた表情で俺を見返した。
「ありがとう。チャンスをくれて」
「お礼は、チャンスを生かした後にしろ。まだ早い」
そして、初めて彼女の優しい笑顔を見た。
とてもきれいな笑顔で俺に告げた。
「『神様ゲーム』へのご参加、ありがとうございます」
陽が落ちそうな夕暮れ時、俺は家への帰り道をひたすら走っていた。
突き当たりの角を曲がると、見えてくる、小さな庭と骨董品並みの古さの建物。
入り口には『福祉施設 虹色の城園(にじいろのしろえん)』との看板が。
どう見ても、『虹色』にも『城』にも程遠い外見だが、俺にとっては唯一の居場所なのだ。
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