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ほう。親父さんが驚いた顔をする。
「めずらしいな。外泊届は書いておけよ」
ああ。と頷いて、引き出しから届けの用紙を取り出し「じゃ、後で提出します」
事務室から出ると、達也と夏樹がいた。
「小言か?なお兄」
「違うよ。…あ、達也、今度の日曜、新聞配達のバイトの代役してくれないか?」
「大丈夫だけど、何でまた」
「友達んとこにお泊りしてくるからさ」
遊びかよー。ちょっと口を尖らしたが、すぐに笑って「たまには、なお兄も息抜きしねえとな。了解」
理解ある弟分は、気持ちよく引き受けて、走り去った。
「なおくん、『友達』って?」
相変わらず心配そうな表情の夏樹に、とりあえず、今出来る最大限の笑顔を向け。
「クラスの奴と勉強会。当番急がなきゃ」
言うだけ言って、夏樹と目を合わせることもなく、その場を立ち去る。
心配性で優し過ぎる、夏樹。
だから、心配させるようなことは言えない。
園の現状も『ゲーム』のことも。
ごめん。でも、俺、頑張るから。
心配させる分だけ、頑張るから。
精一杯、頑張るから。
日が経つのは思ったより早く、あっという間に土曜日の朝が来た。
昨夜は緊張して、夜中に何度も目を覚ましてしまったくらい。その分、新聞配達のバイトは遅れなかったけれど。
明日は交代要員が来ることは伝えた。
達也は何度か短期バイトで配達をしていたので、店の方も簡単に了解してくれたのは計算通り。
まだ何か聞きたそうな夏樹と顔を合わせるのがいやで、朝食抜きだ。
昨日、天川に確認を取ったところ。
『朝なら何時に来てもいいぞ。飯も出す』
相変わらずのぶっきらぼうな物言いだったが、その言葉に甘えることにした。
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