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一度来た家とはいえ、高い門と塀、どどーんと居座る洋館に広い庭。お下がりの学校指定スポーツバッグ一つ手にしただけの俺には、本来なら関わることなどない場所。
萎縮しそうな自分に気合を入れ直すべく、頬をパンパンッとばかりに叩いたところで、クスクスと笑う小さな声に気づいた。
目の前の門の向こう側で少女が立っていた。
「『神様ゲーム』の参加者?」
小学中学年程度か、小柄でツインテールの髪型。紺地に赤い彼岸花模様の着物姿が、妙に可愛げに見える。
「そうだけど、君は?」
「私は望海(のぞみ)。望む海、って書くの。今、開けるね」
すぐに門を開けてくれた上、俺の手を取り。
「こちらへどうぞ」
とても柔らかな羽毛のような笑顔に、断ることも出来ず、そのまま屋敷へと歩いていく。
…こんなところ、他の奴らに見られたら…。
「こりゃ驚いた」
庭から姿を現したTシャツ短パン姿の天川は、何故か感心したように俺を見ていた。
「望海も守備範囲だったとは、予想外」
「『守備範囲』って何だよ」
「双海が好みだと思っていたから…あ、でも、種類的には一緒か?」
だから、『種類』ってなんだよ。
聞きたいけれど、何だか怖い。どうしたものかと途方に暮れてしまった俺。
「平井さん」救いの神は望海ちゃん。「朝ご飯、食べて来たの?」
「え?いや、実はまだで…」
「じゃあ、食堂まで一緒しましょ」
そして、そのまま屋敷の中へと引っ張っていかれてしまい。
「平井さん、いらっしゃいませ」
いつの間にか、メイド姿の双海さんが側にいて。
「朝食のご用意は出来ております。どうぞ」
などと先に立って歩き始めた。
望海ちゃんは相変わらず手を握ったまま付いてきて「私も一緒にいい?」
「望海さん、平井さんのことを気に入られたようですね」
双海さんの言葉に、俺は曖昧な笑みで答えるしかなかった。
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