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微かに彼女の手が震えているように見えた。
頭上から見るサキの顔は、俯いている為解らない。
「…お母さんの方が…落ちついてないじゃん…」
と苦笑するサキ。
どうして苦笑したのか、僕には解らない。
「あのねサキ…ハァ…響君…事故に遭ったんですって…午後四時半頃に…亡くなったそうよ……」
サキのお母さんは、過呼吸になるんじゃないかってくらい泣いていた。
こんなどうしようもない僕の為に。
その事実を聞いたサキは、一瞬身体の動かし方を忘れたかのように固まっていた。
今サキはどういう気分なんだろ?
僕の事、怒ってる?
そうだよね、サキを呼び出しておいて、事故に遭って…何やってんだろホント
固まっていた彼女は、トイレに駆け込み嘔吐していた。
ゲェゲェ喉が鳴っているサキが苦しそうで…。
泣きながら嘔吐してる彼女の後ろ姿。
背中を擦ってやりたい
トイレの扉を開いたまま嘔吐している彼女に、彼女のお父さんが苦しみながら喉を鳴らす娘に話し掛けた。
「響君、霊安室に居るそうだ
響君のご両親が、サキに渡したいものがあるみたいだから、車出してやってもいいぞ」
と言った時、さっきまでゲェゲェ言ってたサキがピタリと動きを止めた。
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