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サキの気持ちは何となく解るよ。
僕も驚いた。
まさか、あのサキのお父さんが泣いてくれていたなんて。
目を赤くして、涙声隠して冷静な素振りを装いながら、サキのお父さんはそう言ってくれたんだから。
僕は嬉しくて仕方なかったよ。
サキはゆっくり振り返り、目の赤い自分の父親と双眸を合わせると目を見開き驚いているようだった。
まさか自分のお父さんが、あれだけ嫌ってた奴の為に泣くとは思いもしなかったのだろう。
サキは驚愕の色が隠しきれなかったのか、数秒その表情を見せた後フラフラっと立ち上がると袖で唇を拭い、
「お願い…響君のとこまで連れてって」
と蚊が鳴くような、力ない声でそう言った。
無気力なサキを見て、僕は何も言えなかった。
例え何か言ったとしても、僕の声は透明で聞こえないのだけれど。
車の中で口を開こうとしないサキに、サキのお父さんは今まで何で、僕の事を嫌っていたのかを話していた。
ホントは僕のことを嫌いじゃない事。
自分が厳しく接して、すぐサキを諦め他の女にいく軽い奴じゃないのか試していた事。
ホントにサキを愛しているのなら、自分がどんなに反対しても決意は固いと見せて欲しかった事。
素直な気持ちを話していた。
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