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霊安室に入ると、ベッドの上で横になっている自分の姿が目に映る。
でも白い布を顔にのせている自分の姿は、まるで別人の僕じゃない誰かが亡くなったみたいで―――――…。
珍しくサキは、挨拶よりも先に僕に近付いて行った。
僕の両親も泣いていた。
こんなダメ息子だったけど、僕ちゃんと親孝行出来てたかな?
僕を無言で見つめるサキに母さんが、
「顔腫れてるし傷もあるけど見たかったら、顔…見てあげてね?
もう最期だから」
そう言って母さんは、また泣いた。
白いハンカチを目の下に添え、
「何でこんな早く…」
と咽び泣いていた。
…親孝行より、僕は親不幸だね。
だって両親よりも早く死んじゃうし、可愛い嫁さんすら迎え入れられなかったし。
孫の顔も見せられなかったんだから。
僕が両親に双眸を向けている間に、白い布を取ったサキは、ボコボコに腫れ上がった僕の顔を唯ずっと黙って見つめていた。
サキ…今何を思ってる?
サキの心の声が聞きたいよ
黙って見ているサキに、母さんがゆっくり近づきスッと紺色の四角い小箱をサキに差し出した。
その箱には黒い染みがついていたけど、僕が渡しそびれた大切なものだとすぐに気付いた。
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