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出来ることなら僕を忘れて
あれから一週間。
雨だろうが晴れていようが関係なく、あの丘にある公園へ赴くサキ。
どうしてそこまでできるのか?
毎日毎日、友達と遊ぶのさえキャンセルまでして僕が指定した、想い出の場所まで来れるのか?
そんなサキを見て思う事は、
出来る事なら僕を忘れてほしい…
サキなら僕よりもっと相応しい男が現れるはずだ
サキには幸せになってほしいんだ
「サキ…淋しいけれど僕の居ない生活なんてすぐに馴れるよ」
そう話し掛けても、サキには聞こえないのだけれど…。
健気に僕が渡しそびれたRINGを見つめては、
「響君」
と…。
最後にもう一度抱き締めたい。
ギュッと…。
その気持ちさえも届きません。
サキを抱き締める度サキは、
『あたし最近太ったんだ』
って言ってたけど…僕にしてみれば変わりなく華奢で折れそうな身体をしていた。
九月終わりの風が切なく、僕とサキの間を通り抜ける。
サキのなびく髪の毛、触れそうな距離なのに僕には触れる事すらできない。
サキのサラサラな髪、ホントに好きだった。
どうしようもなく切なくて。
彼女の横顔が、夕陽に照され、より一層映える。
どうしようもなく愛しくて。
一秒でもいいほんの少しだけ神様、僕の願いを叶えて下さい。
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