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色々寄り道をしているうちに、約束の時間まで後少しとなった。
あの時、遅れちゃいけないとばかり思っていた。
頭の中はRINGとサキの事ばかり。
とにかく急いで、あの公園へ向かった。
息を切らせて公園の階段を上がりきった僕の目に映ったのは、夕陽に照らされながらブランコに腰を掛けているサキの横顔。
僕は愛しいサキを見て幸せ気分に浸り、自然と顔も綻んだ。
僕はゆっくり彼女に近付いた。
俯き加減にブランコを小さく漕ぎながら、僕の名を静かに呟いた。
「響君…」
彼女の“君”が抜けきらない呼び方が未だに可愛く思える。
「遅れて、ごめん」
そう声を掛けたのに、サキは顔すら上げる事なく一点だけ見つめていた。
あれ?
聞こえなかったのか?
…それとも珍しく怒ってんのか?
僕はもう一度言葉を生み出してみた。
「サキ?怒ってる?
…遅れてきてホントごめん、ホントに反省してるから顔上げてくんないかな?」
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