大切な日

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    詳しく言えば、僕の手は彼女の肩をすり抜けた。 彼女の体温は勿論、髪の毛の感触すら僕には伝わってこない。     …何で?     混乱して頭の中が整理出来ない。 小さく揺れるブランコも僕を通り抜けては、前方へと同じ動きを繰り返す。     …僕は何?     自分の掌を見つめた。 別に透き通ってるわけでもない。 怪訝なまま、言葉を生み出す。     「…サキ?」     震える声で呼んでみても、やはり彼女の耳には届かない。     まさか…そんなはずは…     僕は自分の姿を確かめるように、視線を落としていく。     僕の腕時計が罅割れている。 僕の白いカッターシャツが所々破れ赤黒く染まっていた。     これは…いったい…      
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