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「お前達の首を貰い受けに来た!」
瞬きをするよりも速くヘルシャの長剣が鞘から抜かれ、唖然と立ち尽くす下っ端の右腕は鮮血と共に床を転がる。一瞬の沈黙の後、我を失ったかのように叫び……そして絶命した。
仲間の死により頭に血が上った盗賊達は我先にと自らの武器を手に、先ほど長剣を鞘から抜くのと同時に扉を潜り抜けたヘルシャへ襲い掛かろうとするが、たいした広さもないこの室内で武器を自由に振り回せるはずもなく、自ずと一度に相手をする人数は限られてくる。
ヘルシャの思惑通りに事は運び、数人が斬りかかろうとするが一斉にくるのではなく、あくまでも戦い易いように一人ずつかかってくる。ヘルシャはこれを狙っていたのだ。一対一の戦闘とは違い、一対多数の戦闘ではまず如何にして一対一の状況を作り出すかが鍵になる。それをヘルシャは狭い室内を使うことで見事に遣って退けたのだ。
「死ねぇ!」
叫びながら襲い来る敵に、もはや冷静さは無い。雑念が雑じれば剣は鈍り、威力も速さも格段に落ちる。そんな剣がヘルシャに通用するはずもなく、大上段で振り下ろされた鉄の塊を半身になってかわし、右手に握っていた鉄製の剣を両手に持ち直し、下段からの斬撃によって相手の腹部を中心に切断する。血しぶきを浴びながら疾走し、後ろに控えていた二人を斬り捨てた時には既に全身が鮮やかな赤に染まっていた。
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