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感じる。視線を感じる。
俺――真田晋也は、布団にくるまりながら、ただただその視線に怯えていた。
きっかけは一週間前、自分でも不用意だったと猛烈に後悔している。
道端に落ちている、綺麗な金色の石を拾ってしまったのだ。
小学生か、俺は。石拾うって……、なに考えてんだよ。
過去に戻れるなら殴り飛ばしてる。……戻れないけど。
「すいません。すいません。あの石はもう捨てました。元の場所に戻しておきました。だからゆるして!」
近所の迷惑なんて知った事か。迷惑してんのはコッチなんだ。
――不意に、背筋が冷える。
……いや、ないな。
夏に布団を装備していた俺に、神様が涼しさを与えてくれただけだな。
今まで謝ってたけど、俺、お化けと信じてないもん。
よし、振り向こう。ただ布団から出た頭を後ろに向ける。それだけじゃないか。
精一杯の勇気をこれでもかと奮う――強さで表すと全盛期の曙並みだろう。まぁ、弱いけど。
「ワンツースリーでいくからな」
震える声で、俺は言う。……誰にだよ。
「大丈夫、いない。大丈夫、いない! 大丈夫、いない!!」
声を出してないと発狂してしまう。そんな恐怖を曙並みの強さで乗り越え、俺は後ろを振り向いた。
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