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土曜日
AM 7:00
一条高校正門前
「いやそのさ、早くない?」
アルトサックスのケースを手に持った千尋が言った。
千尋の他には勿論、部員4人が。全員揃って手に楽器。それに眠いのか千尋の話しは無視だ。
そんな微妙な空気がしばらく続いた後、車のエンジン音がした。
それもかなり低いエンジン音。
「……なんで民家に大型トラックが」
大型トラックと見られる乗り物は千尋達がいる目前で停車した。
いや、トラックならいいんだ。
その“真っ黒”のトラックはピンクやら黄色でデコレーションされており、言わばデコトラ。
なぁ よせよ……
「冗談はよしてくれよ、経堂寺……」
千尋が引きつった顔を高い運転席の窓に向けた。
窓はウィーンと鈍い音を立てて開き、中から金髪をポニーテールにした若いピンク色のジャージが出てきた。
「あれ、腹がいたいなぁ」
剣山がチューバを抱え逃走。
「あ、朝ご飯たべてない」
神川もクラリネットを抱え逃走。
「…………」
進藤は無言で逃げ去った。
「待てまて~」
桜井に至っては神川を追いかけ消えた。
「あら、やっぱり駄目かしら」
「自信もっていいますね。はい!」
「連れ戻してきて」
「はい」
千尋は泣きながら走った。
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