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「楽しいか?」
剣崎に続き5人が列を成して音楽室に向かう途中、剣崎が不意に千尋に質問をした。
「何がですか?」
「クラブしかないだろうが」
「あぁ……。なんか、やってる気がしないです」
千尋はちょっとだけ口元を緩め笑い、ため息混じりに下を向いた。
「ま、そんなもんだろう。私だってここに来てそんな事を思う日は多々あった」
千尋はふと顔をあげる。
「吹奏楽は吹奏楽だ。馬鹿がいるぞ?楽しいぞ?」
剣崎はにっこりと笑う。千尋はそんな剣崎をみて驚いた顔を隠せないでいる。
剣崎は急に顔をしかめた。
「なんだ……」
「いや、すごく笑うようになったなって……」
「…………。」
剣崎は千尋の足を引っ掛け転かした後スタスタと逃げるように前へ出た。
「邪魔だ馬鹿猿」
「ってんめぇ!」
千尋と進藤の試合がはじまろうとした瞬間、廊下に声が響く。
「剣崎先輩!早くきてください!……!あ!こ、こんにちは!」
音楽室についたようだ。今叫んだ小さな女の子は扉の前で跳ねており、剣崎を呼んでいるみたいだ。
髪型は綺麗なボブで顔も幼く、みた感じ高一……もしくはそれ以下に見えた。
「なんだ、また清水か……?」
「はい……暴れてます」
剣崎はため息をつきながら女の子の背中を押し音楽室へと入れた。
「すまんな、ここが音楽室だ。さ、入ってくれ」
剣崎が振り向きながら音楽室の中へと入る。
一条の音楽室と入り口の造りが似ているななんて思いながら、千尋たちは音楽室へと足を踏み入れた。
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