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「千尋……桜井とやらの言うとおり、その話は本当なのか?」
音楽室が静かになる。
清水でさえ静かになる。
剣崎に関しては本当に興味があるくらいの顔で千尋に尋ねているようだったが、千尋からすれば何となく説明しにくい感じに追いやられていた。
「あー、はい……先日できあがりました……」
「ほー、またなんで」
「楽器が吹きたかったから経堂寺の案に乗った」
剣崎の切り返しに進藤が代わりに答えた。千尋は少し進藤にムスッとした。
実際そうではあるが、千尋からすればそうであって欲しくなかったという考えがあった。
しかし反論できない自分が居た。
「面白い奴だな。私の男になるか?ん?」
「でた!剣崎先輩の年下狙い!」
早川がすぐさま突っ込んだ。この人まったく変わってない。なんか安心した。
「興味ない」
「私もだ」
なんだこれ。だれか助けてくれ。
千尋は剣山に目線を配ろうとしたがチューバの影に隠れ見えなかった。引きずりすぎ、駄目だアイツ。
なら神川……苦手だがこの場を……。
「へー、橋本さん去年ブライアンだったんだ。私は晴天だったよ」
「そ、そうなんですか……やっぱり本格的な自由曲選ぶならマーチが無難ですよね」
なんか盛り上がってやがる……………。ダメだ……。
「千尋…………。ま、一条の皆さん。こいつは楽器の為に吹奏楽やるような奴じゃないさ」
剣崎が全員に向かって言った。
すると一条の生徒4名は口を揃えて「知ってます」と言った。
「だってさ、千尋」
剣崎はやっぱり昔と違い、にっこり笑って見せた。
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