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「あの清水正史の息子なの」
「なん……だと!?」
進藤がいつになく叫んだ。目が完全に経堂寺を疑いにかかっている。が、経堂寺はニヤニヤしながら「ほんと」と言った。なんだか一瞬ハートが見えた気がする。
ちなみに後で経堂寺から説明があったが、東京にある東京都音楽団のホルン奏者だ。良く吹奏楽向け雑誌などで取り上げられ、金管奏者なら大概がしっている人物だ。コンクール審査員もつとめた経験が多々あるようで。
「ちっ……なんのつもりだ」
進藤は経堂寺に目も向けず、こんな場所に連れてきた経堂寺に疑問があって仕方がないらしい。
「だから連れてきたのよ!剣崎に勧誘任したんだから、立派な部員たちよー。仲良くね……進藤部長!」
経堂寺はそう言うと音楽室をそそくさと立ち去った。
「進藤……お前部長だったんか」
剣山がもうビックリもせず進藤に聞いた所、窓を向き頷いた。
「猫もかよ……俺もだし」
千尋がそう口に漏らしては廊下の窓を見た。
「……なんだ……この疎外感……」
剣山がまた肩を落とすように落ち込んだ。
「(船頭ばかりじゃねぇか……)」
千尋は立ち上がってまた三条のメンバーを見渡した。確かにレベルがそんじょそこらの奴と違うのがわかる。
その時、なんとなく進藤を見た。
進藤は立ち上がっては千尋と同じく三条のメンバーを見ては千尋を見た。
「お前にはプライドがあるか」
「あるとも」
「わかるな?」
「あぁ」
奇妙な事に2人してにやついた。
そして2人は全力で音だしを始めた。
剣山は神川の後ろで泣いていた。
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