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「(くっそぅ。やっぱり上手いな)」
進藤は向かい合わせで楽譜を吹きながら感じる。やはり、全体で聞いたあの時の音よりもさらに鮮明に耳に響く。
彼女はマーチング経歴があるからなのか、耳につくやらしい音とは真反対の、素直で力強い音色を持っている。
その点やはりピッチやアーティキュレーションなどのバランスはとても良い。
まさに万能なトロンボーンだ。
進藤は指示を出すように演奏を止めるよう促した。
「……すまない、ここはもっと裏拍を強調して貰っていいかな」
「はい、了解です!」
そうやってしばらく続け、30分程がたった。
「上手いな。まったく問題がない」
「いやはや……進藤さん。やはりあなたはやりますね」
早川も返すように驚いている。が、顔は少し笑みを浮かべていた。
「燃えますね。この曲も、進藤さんと吹くことも」
「……」
進藤は少し戸惑った。確かに楽しい瞬間である。
―俺はどうやら吹奏楽を続けられているらしい。馬鹿共に感謝だ……―
しばらくして2人は練習を切り上げる事になった。
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